必要なことは、日常取引の大部分が、委譲された職責ごとの権限に従って決裁されていくことです。
こうして決定された事項は、規程として文章化される必要があります。
の事項を明確化したものが「業務分掌規程」であり、の事項を明文化したものが「職務権限規程」です。
公開審査においては、これらの諸規程は資料として提出を求められ、実際に適切な運用がなされているか否かが審査の対象となります。
組織的な業務分掌によって、不正や誤謬の発生を未然に防止する組織の仕組みを「内部牽制組織」といいます。
この内部牽制組織は、会社財産の保全のうえで重要な役割を果たしており、公開申請書類の中には主要な取引に関する事務手続きのフローチャートが記載され、適切な内部牽制組織が確立されているか否かが審査の対象とされます。
内部牽制組織の考え方は、一つの取引の処理を一人の担当者に任せず、いくつかの過程に分け、相互にチェックできる仕組みをつくり、業務の信頼性と安全性を確保しようとするものです。
その基本は、会計業務、仕入れ、販売等の営業業務、保管業務、をそれぞれ分業化するか、人員数のために完全に分離できない場合には、それ以外のものを分離することになります。
このような分業化はある程度の人員の増加をもたらしますが、その割に効果が目立たないものです。
このため、管理部門の人員増加を抑えている多くの中堅企業では、十分な整備が行われていないのが通常です。
しかし、内部牽制組織は横領、着服といった不正やミスを防止して、会計記録の正確性を保証するのに役立つことはもちろん、業務の専門化を促進し、相互チェックにより浪費や非効率を削減することにもつながり、経営管理上の重要な効果を持つものです。
このため、公開審査上は、申請会社の企業規模にふさわしい内部牽制組織を整備することが、投資家保護と企業経営の安全性の観点から要請されています。
ただし、完璧な内部牽制組織を整備することが必ず要請されているというわけではありません。
経済性などから過度の負担となる場合には、実現可能な範囲の内部牽制組織にとどめ、不備な点については、内部監査やアウトソーシング機関との照合などにより補完することができます。
今後増加が予想される小規模な公開会社においては、この実現可能でかつ適切な内部牽制組織のあり方を、専門家である監査法人(公認会計士)などの意見を参考にして整備することが実務上のポイントとなるでしょう。
なお、「会社の会計組織が適正な内部牽制組織によって有効に統制され管理されているかどうか」については、監査法人(公認会計士)が、公開申請時の監査概要書において意見を記載することとされています。
販売・購買・在庫などの各種業務の管理制度を構築し、適切に運用することは、組織的な企業運営の重要なポイントです。
各種業務の管理体制の見直しにあたっては、各業務をバラバラに見直すのではなく、この図のように、販売業務を中核として、購買、在庫などの各種業務を総合化し、各業務の接点をつなぎ、全体としてバランスのとれた管理制度を構築する必要があります。
販売管理、購買管理、在庫管理には、それぞれ固有の課題と管理手法がありますが、そのすべてに共通する三つの事項があります。
内部牽制組織の「物」を扱う人と、「金」を扱う人を分けることがポイントです。
例えば販売管理の場合は、販売担当者が、製・商品の保管・出庫業務、売上計上や売掛金回収の会計処理を兼務しない組織となっている必要があります。
職務分掌・職務権限の明確化各担当者の職務の範囲と、その職務を遂行するための権限を明確にするのがポイントです。
例えば購買管理の場合は、仕入先の選定と信用調査、仕入価格の決定、発注、検収、記帳、買掛金の支払いなどの各業務について、適切な職務分担と決裁権限を明確にしておく必要があります。
予算統制による管理利益計画と各種の予算により、各業務の目標と実績を適切にコントロールしていくのがポイントです。
例えば在庫管理の場合は、販売予算や製造予算より、製品や材料の適正在庫水準を設定し、コントロールしていく必要があります。
それでは、販売管理・購買管理・在庫管理について、それぞれの業務管理の概要を見ていきます。
販売管理は、与信管理、売上管理、回収管理、販売利益管理(得意先別・製品グループ別)に大別されますが、広義の販売管理には、このほかに、販売人事管理(業績評価、生産性、報奨金)など、様々な管理があります。
与信管理新規取引を始めるにあたっては、興信所や金融機関などを利用して取引先の「信用調査」を行い、その結果に基づき売掛金や受取手形などの与信の許容限度を設定するといった「与信限度管理」を確立し、以降も定期的に見直しを行う必要があります。
また、取引の開始にあたっては、締日・回収条件等を明記した「取引基本契約書の整備」も必要です。
売上管理受注の段階で売上局を計上したり、過大な売上予算を達成するために押し込み売上や預かり在庫が発生し、「売上計上管理」に問題があるケースがしばしば見受けられます。
このような状態を改善するためには、受注と出荷を明確に区分し、出荷の事実に基づいて売上高の計上を迅速に行い、返品・値引きの内容の検討や、在庫や売上原価率との対応から、異常な売上高の計上が速やかに発見できる体制を築く必要があります。
また、受注から出荷までの社内業務についての「出荷管理」も、すでに大部分が整備されている企業が多いのですが、得意先の受領印のある物品受領書の網羅性を見直すなど、内部牽制を十分に考慮した所定の手続きを規程・マニュアルとして整備し運用する必要があります。
出荷された商品の代金を約定の期日に正確に請求し、支払われた代金と自社の請求額とを照合し、不一致がある場合は出荷記録との消し込みを行う「回収事務管理」は、改善を要する場合がしばしばあります。
また、適切な回収事務と与信限度管理の運用による長期滞留債権や不良債権の発生の防止や、残高確認状による取引先への定期的な債権の確認などの「債権管理」も、併せて整備する必要があります。
物を売る立場と買う立場では、それを成すための努力に差があるように、企業にとっても販売管理の重要性は購買管理にはるかに優るものです。
このため、未公開会社の多くでは、購買管理や在庫管理は販売管理ほど整備されていません。
しかし、購買は大きな支払いとなりますから、会社財産を保全し、利益を確保するためには、購買業務や在庫管理業務もしっかりと管理されなければなりません。
また、公開企業として投資家にタイムリーな情報開示をするためにも、正確な購買記録や在庫受払い記録を保持する必要があるのです。
購買管理は、発注管理、仕入管理、支払管理に大別されます。
発注管理購買には内部牽制上の配慮が特に必要なので、仕入先(外注先)の選定、入札や交渉による発注価格の決定の方法について所定の手続きを明確にします。
また、適正在庫管理と連動した適時・適量発注のために発注台帳を整備し、納期管理を含めた発注残高管理を行います。
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